Pure Land Buddhism vol.2

2023年07月11日

Pure Land Buddhism vol.2



仏教の中でも浄土教は
Pure Land Buddhismと呼ばれます
“Pure Land”って…
どこかにあるテーマパークの名前みたいですが…
英語ではそうなるのです



以前にインドで開かれた世界仏教徒大会の際
隣に居合わせた
香港から来た中国人の僧侶と話していたとき
「どこから来たの?」
「日本です」
「宗派(教義)は?」
「浄土真宗(Pure Land Buddhism)だよ」
と答えると
「あぁ、Pure Land Buddhismね」と
ご存知のようでした
浄土教の教えは仏教が中国に渡って
大成されたので
ちゃんとご存知だったのでしょうね…



日本から参加した僧侶の中でも
髪の毛を生やした僧侶は私だけ
もちろん世界各国からの参加者の中でも
有髪の僧侶は珍しかったと思います
だから話しかけられたのかもしれませんが



ちなみにわたくし今はツルツル頭ですが・・・
以前は髪の毛があったんですよ・・・(^^;;






Pure Land Buddhism vol.2



さてPure Land とは
“清浄な世界”という意味になります
「土」は仏教では「世界」を表す言葉で
「浄土(“浄らかな世界”)」と呼ぶのですが
“浄らかな世界”とはつまり
ブッダの悟りの境地(世界)を意味しています
つまり苦しみのない境地(世界)
煩悩を離れた世界です



「浄土」の反対は
「穢土(えど)」”けがれた世界”です
つまり私たちの世界
煩悩いっぱいの世界
苦しみいっぱいの世界です
苦しみを堪えなくてはならないので
「堪忍土(かんにんど)」”たえしのぶ世界”
とも言われます



生きているこの世は
苦しみから逃れられない
煩悩から離れられない
だから苦しみいっぱい
ツライいこといっぱい
争いばかり
思うとおりにならないことや
どうにもならないことばかり…
それが私たちの世界です



だから死後の世界はせめて
苦しみやツライこと
争いのない
煩悩を離れた世界を求めて
「浄土」という概念を
創造(想像)してきたのだと思います
だから「浄土」とは死後の世界観として
受け取られてきたのだと思います
また
命を終えると煩悩も消滅するので
日本では死者を
お釈迦さまと同じように煩悩を滅した
「ホトケサマ」と呼んで敬ってきたのでしょう



科学を信じている現代人は
「浄土」と聞いてもピンと来ないかと思いますが
かつての日本では(または現在も)
「浄土」という世界に生まれ往くことを
心から願っていたのだと思います
その願いはとても切実で
「浄土」を信じることが
この世を生きる支えにもなり
この世の苦しみを堪える力となり
死の恐怖を克服する道
だったのではないかと想像します



ちょっと話は逸れますが
ほんの数十年前までは
赤ちゃんや小さな子どもが死んでしまうことは
どこの家庭にもよくあったことだと思います
お内仏(お仏壇)の中には
そういう子どものお位牌が入ってはいませんか?
昔はもっと「死」が身近な事としてあったのだと
思います
現在はあまりにも「死」が遠のいて
他人事 
あり得ない事
想定外
となってしまっているかもしれませんが・・・



命を終えた者はみな
「浄土」という世界に還っていく(生まれ往く)
一つのところに還っていく(生まれ往く)
死んでしまった赤ちゃんも子どもも
爺さんや婆さんも
戦争で早く逝ってしまった子もみんな
苦しみのない世界
浄らかな世界
争いのない世界
「浄土」という世界で生きている
というように受け取られてきたのでしょう
そして私自身も同じように
この命を終えたら
同じところに還っていくのだと
安心して死に臨んでいけるように
死後の世界として「浄土」が
信じられてきたのだと思います





バックナンバー

【2024年】

住職紹介

前田健雄(まえだたけお)
真宗大谷派一心寺住職。

1977年名古屋市生まれ。
大谷大学大学院文学研究科仏教学専攻修士課程修了。
真宗大谷派ハワイ開教使として5年間ハワイに赴任。
NPO法人ほがらか絵本畑の理事。
名古屋刑務所篤志面接委員

前田健雄