HAWAIIのおもいでVol.3

2023年06月30日

HAWAIIのおもいでVol.3


ある日のこと・・・
お寺にかかってきた電話を取ると

呂律の回っていないような
とても聞きづらい口調の男性の声
「仏教について話が聞きたいから
会いに来てくれないか?」との事
名前と住所を聞いて
会う約束をして電話を切りました

約束の当日
聞いた通りの住所を訪ねてみると…
そこは金網で覆われた施設…
昨日のブログで触れた
麻薬常習(中毒)者の収容施設だったのです!
インターホンを鳴らして
「○○さんに呼ばれて会いに来た」と告げると
「なんだって?!もう一度言ってくれ!」と…
再び要件を伝えると…
「確認するから少しそこで待っていてくれ」と…
5分ほど(かなり長い間)待たされ…
「確認した。今開けるから中へ入ってくれ!」と
金網のゲートが開けられて中へ通されました

建物内に入ると
小さな事務所に通されてすぐ
映画やドラマで見るような
ボディタッチの身体検査

「これは危ないから外せ」と
念珠や輪袈裟を取り上げられて
「ボールペンとか何も持っていないな?」と
何かと物々しい…
「いいかよく聞いてくれ
お前が会いに来た名前の者は
確かにここに収容されている
だけどそいつが
いつどうやってお前に電話したのか
俺たちは知らない
ここの収容者は勝手に外部に電話することは
許されていない
しかも電話はこの事務所にしかない
俺たちは誰も電話を許可していない
まったく不思議だ
とにかく今日は
これからそいつに会わせるから
もしも万が一
何かあったらすぐに部屋のドアを叩け!
俺たちは部屋の外で待っているから
話が終わった時にもドアを叩いてくれ!」
と言って
小さな教室のような部屋に通されました…

「え・・・?二人きり?個室に?マジか!?」
と思いながらも部屋に入ると
すぐに一人の男性が部屋に入ってきました
背は180cmほど
腕の太さや身体の大きさはハンパない!
(プロレス好きの方は
“クラッシャー・バンバン・ビガロ”
を想像してくださいw)
とてもじゃないけど
“万が一”の時には敵うはずがない!(>_<)
簡単に首の骨でも折られそう…(>_<)
身体中タトゥーだらけ
しかも眼は虚(うつ)ろで焦点が定まっていない
もう完全にヤバイ!!


学校にあるような
小さな机に向かい合って座り
仏教の何を聞きたいのか尋ねると
一冊の本を出してきた…
「このページのココを教えてくれ」
完全に呂律が回っていないし
ガサガサ声だし
ほとんど何を言っているのか聞き取れない
しかも出してきた本は
「これチベット密教じゃ〜ん!!!」
チベット密教なんて全然知らないし(>_<;;
とりあえず開かれたページを読んだけど
やっぱりさっぱりわからない・・・(>_<;;

あれこれと少しだけ会話をして
答えられることだけ話して・・・
(おそらく10分~15分くらい?)
言われたとおり部屋のドアを叩いて
面会は終了したのでした・・・



HAWAIIのおもいでVol.3



後になって思い出すと
「よく無事で帰って来れたな…」と思うのですが
その時の緊迫感も緊張感も
思い出せないのです…
度を超えた緊張感だったのか
恐怖とかあらゆる感情が
停止していたかのように
不思議なほど冷静でした

それ以後
電話がかかってくることはなく
彼がどうなったのかも知りません




何年か前に(日本帰国後)
ふとこの出来事を思い出し
「あれは夢だったんじゃないだろうか?」
と思ってGoogle mapで調べてみると…
ちゃんと記憶の通りの場所に
記憶の通りの景色で地図にありました


ホントに貴重な体験
滅多に出会えない経験を
させてもらいました!(^-^)






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【2024年】

住職紹介

前田健雄(まえだたけお)
真宗大谷派一心寺住職。

1977年名古屋市生まれ。
大谷大学大学院文学研究科仏教学専攻修士課程修了。
真宗大谷派ハワイ開教使として5年間ハワイに赴任。
NPO法人ほがらか絵本畑の理事。
名古屋刑務所篤志面接委員

前田健雄